いつものようにルノアールでコーヒー1杯で閉店ギリギリまで時間を潰してから、会計を済ませて階段を降りる途中だった。身体の内側、背中のあたりで何の前触れもなくポンという音がした。背中と腰を繋いでいる何かがズレたような感覚があり、直後、腰回りにものすごい痛みが走った。背中を少しでも丸めたり、角度を変えようとすると激痛が走るので、ほとんど体勢を変えることができない。そういえば明日健康診断だったよな、などと考えながら、ルノアールから歩道に降りていく階段の途中で、しばらく同じ姿勢のまま固まっていた。
なんとか部屋までたどり着いた。とにかく横になろう、と思ったのだが、身体の可動範囲に制限があり、かつそれをどこまで動かせるのかよく分からないので、QWOP みたいな感じで、身体の各部位を動かしながら痛みの発生しない横臥のやり方を探るしかない。
まずは腰を落とし、右手を床に付き、左手を胴体に回し、そのまま身体を30度ほど傾け、みたいなプロセスを経て、なんとか布団に横になることはできた。しかし、横たわっているうちにじわじわと脇腹の辺りがこわばり、身体の奥から痛みがこみ上げてくる。痛さのあまり起き上がろうとしたら、今度は身体がまさに QWOP 的なアクロバティックな姿勢のままロックされてしまって動けない。結局その日はほとんど眠れなかった。腰を痛めた独身男のところに、見舞いの代わりにクマが来る黒田硫黄の短編を思い出した。
翌朝、近所で一件だけ日曜に空いている整形外科に行った。骨に異常はなく、単なるぎっくり腰だった。病院とか薬局では、みんなが介助してくれたり荷物を持ってくれたりして助かった。こんなに周囲が親切にしてくれるのなら、たまには腰が吹っ飛ぶのも悪くないのかもしれない。