そもそも自分が退職するって言い出したのが5月の末あたり。そこから会社が温情で休みを与えてくれていた。その間に勉強するなり職探しするなりしたらいいじゃない、という話。メチャクチャありがたいことではあった。
しかし今思えば、退職したいと告げたその時点で、完全に決意が固まっていたわけではなかった。自分は一度出したはずの結論を再び宙吊りにし、先延ばしした。与えられた猶予期間を、新しいプログラミング言語勉強したり風俗行ったり、この数年忙しさに言い訳してやれてなかったことをやることに費した。でもそれは言ってしまえば優しい環境に甘えて遊んでいただけだ。職探しは一切しなかった。遊ぶのは楽しいことではあったが、意思決定のデッドラインは迫りつつある。流石に何ヶ月も何も仕事しない状態でフルで給料貰い続けるわけにはいかない。
上のエピソードから明らかなように、この会社はとにかく優しい。そしてとんでもなく居心地が良い。でも言い換えればそれはヌルさでもあって、自分はそこにメチャクチャに依存している自覚がある。成長が鈍りつつあるのも感じていた。それはエンジニアとしての技術レベルから言っても、年齢から言って、何らかの形で組織や仕事を引っ張ることが期待されるだろう労働者としても。普通に30歳超えてるわけで。年齢がどうとかそんなこと考えるのはバカバカしいしカッコよくないと思う。でも現実的には意識せざるをえない。
今の会社では、自分は組織の運営に関わるようなこととか、仕事をリードするような役割は全部他人に任せていて、与えられたタスクを実装することしかやっていない。この小さい会社の最大の特徴にして最も非常識な部分は、一言でいうと、役割やポジションが、年齢とか勤続年数とか貢献の度合いに応じて上長(そもそも上長みたいな概念はない)から与えられるのではなく、やりたいやつがやる、というところだと思う。会社の運営に関わりたいならやれるし、技術選定がやりたいならやれるし、求人に関わりたいならやれるし、広報活動やりたいならやれるし。そう明確に主張したわけではなかったけど、自分は実装だけやることを望んでいた。組織の運営にも客との交渉にも関わりたくなかった。はっきり言えば、自分にとってそれが一番責任を感じなくて済む気楽なポジションだったからだ。そしてそれは受け入れられていた。
たぶん今の自分に仕事をリードする能力はまったくない。まったく自信がない。適性もないかもしれない。一方でコーディングは向いていると思うし、好きだ。でも自分クラスの実力しかない人間が、この先何十年も、誰かに仕事の道筋を完璧に引いてもらって、完全に分割されたタスクを受け取り、その実装だけやって食うことは不可能だとも思う(というかどんな実力があってもそんな生き方は無理なのかもしれない)。このままでいいのか、このままずっとここにいたら、居心地の良い環境に甘えたまま物事をやり切れずに、ある日突然会社が消失したら自分は無能な人間として放出されて露頭に迷うのではないか、みたいなことを考えていた。
もちろんこれは環境のせいにしているだけなのかもしれない。案件をリードするようなポジションをやってみたいです、でも一人では不安なので助けてください、って言えばいいだけの話なのかもしれない。この会社ならそう主張すればそういうポジションに配置されるはずだし、助けてくれる人もいるはずだ。本質的に自分が悩んでいたのは仕事の性質の問題で、それをはっきりと主張できない自分の弱さが、責任のある立場を回避してダメージを受けることを避けたい気持ちこそが問題なのかもしれない。